三宿で映画プロデューサー・山本又一朗さんと2008年の映画の展望について語り合いました。ゴージャスランチ(おごり)つき!

今回は、大ヒット映画『クローズ ZERO』をプロデュースしたことでも話題の映画プロデューサー、山本又一朗さんと三宿でランチトーク!
年末年始号にふさわしい大物の登場に、増本氏も珍しくキンチョー気味?(増本氏は、基本的に体育会系体質のため、先輩には頭が上がりません)
増本氏とは映画『あずみ』(2003年)以来のおつきあい。敬愛の情を込めて「マタさん」と呼ぶなど、山本さんの豪快で、懐深いお人柄に魅了されています。
ともに映画界に生きる者同士、近年、元気を取り戻してきた日本映画界の話や、『クローズ ZERO』秘話、2008年の邦画界の展望などについて語っていただきました!
し・か・も、ゲストにも関わらず、山本さんの自腹で、我々(増本氏を含む)委員会に豪華なチャイニーズランチを・・・・・・・ 普通では、ありえない展開ですが、とにもかくにも、ごちそうさまでした!!!

 −  年末年始号ということで、2007年を象徴する方に登場頂き、ありがとうございます!

増本 忙しいのにすみません! しかも、ランチまでごちそうになって。まるで、僕らが“たかり”みたいですね(苦笑)。

山本 ワハハハ・・・いつか、増本にごちそうになるよ。増本はね、『あずみ1』を製作した時に初めて会ったんだけど、続編のパート2の時には、結構重要な役で出演してもらったんだよね。ところが(主演の上戸)彩が繊細だし、すごく真面目だからね。パート1で『あずみ』の役柄を熟知してる分、役作りに気が入り新しいスタッフ陣と、その解釈の違いを感じて苦しんだんだ。主張して揉めればいいんだけど、謙虚で優しい人だからね、彼女は・・・・。我慢しちゃう・・・・・・。

増本 ふむふむ(ひたすらうなずく)

山本 でね、マネージャーに彩に息抜きが必要なときは、俺に連絡してくれといったわけなんです。でも、東京に行ったり来たりの俺が、広島や京都、神戸のロケ地に必ず時間が作れるわけじゃない。そこで「増本、すまん。彩をケアしてくれ」って。

増本 はい。そうでしたね。

山本 だから、(『あずみ2』撮影中は)時々、彩とマネージャーを、増本がご飯食べに連れてったりしてたんです。そうなると、俺に時間が有るときも、当たり前のように増本も一緒で(笑)。それ以来、彩は「増本さん、増本さん」って慕ってますよ。

増本 役者さんのそういったケアやスケジュール管理する人を、『演技事務』っていうんですけど、俺は「夜の演技事務」って呼ばれてましたから(笑)。

山本 ワハハハハ!増本は吉本出身で天性の芸人気質だから、彩も楽しそうだった。

増本 あれ? 俺も役者なのになと。

山本 (大いにうなずきながら)アハハハハハ。

増本 確か、原作者の先生が神戸にいらしたときだったと思うけど、マタさんが先頭に立ってみんなでご飯を食べにいったんですよ。で、食べ終わったときにマタさんが「役者は朝も早いし、帰りなさい。俺たちは先生ともう1軒行くから」っていうんで、俺もお疲れ様でした〜って帰ろうとしたら…「お前は違うんだよ」って。でも、俺も役者ですけどって言ったら「役者でも、違うの!」って言って。

山本 (うれしそうに満面の笑みを浮かべて)アハハ。そうそう。

増本 あるとき、(撮影が)神戸やったから、間が2日空いたときに東京へ戻るのもなんだしって思って、大阪の実家へ帰ってたんですよ。そしたら、携帯が鳴って誰かなと思って見たら「山本又一朗」さんって。どうしたんですか?って出たら、「お前、今どこにいるんだよ」って。オフなんで大阪ですって言ったら、「ダメだよ、彩が今日はお肉食べるんだから」って言うわけなんですよ。

山本 そうそう、役柄が悪人面の善人だから飲み疲れてるとちょうど良かったりして・・・・。(うれしそうに満面の笑みを浮かべて)アハハ。

増本 でも、店も知らないし、彩ちゃんが行くなら個室じゃないと店も大変だろうし……っていうんで、ホテルの人といろいろ相談したんだけど、神戸の店ってどこも(シェフが客の)目の前で焼いてくれるから、個室なんてないんですよ。それで、結局のところ僕はどうしたかっていうと……店を貸し切りました!

山本 (増本氏の話をうれしそうに聞きながら)フフフフ。

増本 そのときの俺の心境としては、彩ちゃんだからというより、マタさんの頼み事だからなんとしても、叶えたいっていう一心でしたよ〜!

山本 アハハ。俺は全然、そんな独裁者じゃないんだよ。でもね、増本にはそうやって考えてくれる安心感があるんだよね。「あいつに任せておけば、一歩踏み込んで考えてくれるだろう」っていう。それにしても、『あずみ2』でのお前のキャラもおかしいよな(笑)。

増本 そうですねー。(『あずみ2』で)遠藤憲一さんが死に、小栗旬君が死に、なんで俺だけ生き残ってるの?って感じでしたもん(笑)。最初はエンケン(遠藤憲一)さんや旬君ら、撮影前半は夜も出演者で大勢で飲んでたんですよ。でも、(役で)死ぬとみんなそれぞれ東京に帰っていきますよね。で、段々と少なくなって行って、気づいたら、残ってるのが彩ちゃんと俺と、神山繁さんや平幹二朗さんみたいなメンツになってて。そうすると、気軽にご飯食べに行こうとはいえないメンバーですからね。

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− 確かにそれは、緊張感漂うメンツですね。

山本 アハハハハ。でも、楽しい現場だったね。

増本 はい。ただ、地方ロケって、早朝から夜まで撮影、その後は知らない地で、ご飯食べる所捜しで・・・忙しいなぁ〜って思いましたけど(笑)。

山本 (笑)そうだね。増本はもともと監督の北村龍平たちと一緒に仕事してて、関西の映画人チックな感覚がある。吉本にもいたし、笑いができる役者だよね。笑いというのは、貧しくて繊細で頭のいい人が、叡智を絞って場の空気を支配する事だからね。リッチなところからはあまり出てこない。リッチな人が笑いをやると、どこか嫌らしい感じになるんですよ。

増本 (感心しながら)はぁ〜なるほど・・・

山本 笑いができるのは、人間のレベルとして1つ上だと思ってるから。苦しい時期を過ごしてきて、人よりも何ミリか進んだことが言えるから、笑いがとれるんだと思うんです。中には天然で、存在するだけで面白い人もいるけど、多くは頭のいい人間が多い。
(少しあらたまった口調になって)それだけじゃなく、増本は脚本書いたりもしてて、創作する側に立つ事もあるから、役者だけやってるのとは色が違う。最初から、なんか色濃い感じはあったよね。それに、彩が一緒に歩いてても、「フライデー」されないしね(笑)。

増本 そうっすね。なんだったら、写真撮ってくれ!!って思ってましたけど。僕にとっては充分な売名行為になるし。

山本 ワッハッハ。

 −  なるほど。上戸さんを介して、2人の絆が深まったと。
   2007〜2008年末年始号ということで、07年の映画界を振り返りたいのですが。

増本 やっぱり、なんといっても『クローズ』の成功ですよね。おめでとうございます!

山本 (すこし照れながら)いやいや、ありがとう。

増本 僕もオープニングだけですが出ていたので、ものすごい数のメールがきましたよ。

 −  どういった経緯で増本氏は『クローズ ZERO』に出演することに?

増本 マタさんに、「みんなで飯食べるから来ないか?」って誘われて。2軒目に行く途中、(青山の)骨董通りを歩いてたときに、マタさんが「みんなでまた楽しく(クローズで)地方ロケしような!」と。で、俺はその時、出演は決まってなかったんだけど、「ありがとございま〜す」って調子イイ感じで言ったら、「あ、増本忘れてたじゃん!よし、お前も出ろ」って(笑)。その後、本気で「ありがとうございま〜っす!」ですよ!(一同・笑)

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 −  ところで、『クローズ』のようなハードな映画が大ヒットした理由はなんでしょう?

山本 そうですね……、まず第一に原作が3200万部の大ヒットしてて、いろんな人たちがチャレンジしてきたけど、これまでは原作者が(映像化を)許さなかった。あの名作が遂に映画化されるというような乗りがあったと思いますよ。しかもそれを、『クローズ ZERO』ということで、原作に無い話をクリエイションしたという部分もあると思います。原作者の高橋ヒロシさんは1人の女性も登場させないけど、映画には出てくる。鈴蘭高校の卒業生としてヤクザも出てくるなど、映画的に立体感のある話にしてったんです。コミックのパワーに圧倒されただけの映画化はうまく行かないんです。映画的なアレンジをしなければ、あの名作の足許にも及ばない作品になってしまうんです。コミックにはコミック的な手法があり、映画には映画ならではの創り方があるんです。それによって、原作の熱心なファンたちにも「なんだよ、ちゃっちいな!」って思わずに受け入れられたんじゃないかと。

増本 (感心しながら)ふむふむ…

山本 また、小栗旬が俳優として人気実力ともに上向きに走ってて、頂点の少し手前の初主演作品という勢いもあった。「花男」や「花ざかり」をやった小栗旬と「電車男」の山田孝之が何やるの? みたいなところもあっただろうし。小栗にしても、山田にしても、意外性があり、やった結果としては役柄に対して信憑性があったと思います。まさに旬な二人の俳優の力は大きかったと思います。

増本 なるほど…。

山本 ただ、いじめが社会問題になってる時代に、高校生の暴力三昧の映画化をなぜ許すのかという意見は必ず出ると思った。そして考えたことが映画の精神として反映されていると思うけど、いじめは強い人間が弱い人間を殴ったりする。でも、この映画では弱い人間が上に向かって殴り掛かっていくんです。上に上がるためにしか拳を使わない。しかも、恨みでもないし、お金がからんだりもしないから、動機は非常に純粋なんです。
それと、今の時代ってベタなこととかってダサイって思われがち。昔はお年寄りが電車に乗ってきたら、席を「どうぞ」って言えた。でも、今の子はいろいろ考えるわけです。席を譲ったら、そのお年寄りに「私を年寄り扱いして!」と失礼かもしれないとか、隣の人も譲りたいんじゃあないかとか、つい考え過ぎてる。考えることは悪い事じゃないけど、その結果、動かないんです。で、動かなくても考えてる人が偉いみたいな時代の風潮になって来てる。すなわち、「空気読める/読めない」という事にもつながっていくんですよ。でもね、空気読まない奴でも面白いやつは一杯居る。だから映画の中ではそんなことを気にせず、がむしゃらに自分のやりたい事に向かっていくエネルギーあふれる高校生の姿を描きたいと思ったんですよ。

 −  空気を読まない人に面白いやつがいる、というのは興味深いですね。

山本 空気ばっかり読んでると、行動力が失われるんですよ。ちょっと位は神経に障る事があってもOKですっていうダイナミズムが大切です。無神経で良いと言ってるんじゃあ無いけど、空気なんか読んでても、気が小さくなるだけだから、あえて読んでないような行動をとることで、社会全体が活性を持つ事だってあると思うんです。ビビッドに周りの空気に敏感になって、常にアンテナを立てて生きていくのか、やりたい思いをみんなに伝えあって、そのことに向かってみんなも前を向いて面白がって生きていくのかだと思うんですよ。本当の勇気ってそこら辺にあるような気がする。

増本 そうですよね。

山本 自分の感性を受け入れてくれるだけのフィールドで生きるという、パッシヴ=受動的な生き方ってどうなんだろうって思うわけ。自分だったら、やりたいことを思いっきりやって、面白がって生きたい。だって、まだ(俺は)自分のことを17歳だと思ってるから(笑)。

増本 あのー、せめて20歳くらいにしてもらえますかぁ。

山本 ワハハハハ。

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 −  じゃあ、17歳ってことで(笑)。08年の映画界はどうなっていくでしょう。

山本 毎年、いろんなヒットがあります。ただ、僕が作るのは映画らしい題材の映画です。映画はその年、時期によってヒットする/しないが大きく分かれます。『クローズ』だって、あの時期じゃなく、春休みに上映してたら成績は違ってたかもしれない。『恋空』も、空という感傷的な言葉と季節がうまくリンクしたのかもしれない。でね、Yahoo!の映画評とかで『恋空』があまりに酷評されているから、観てきたんですよ。

増本 で、どうでしたか?

山本 すばらしいと思いましたね。今井夏木さんという監督は才能があるなと思いました。『恋空』のように、これほど評価が分かれる作品は、見えるはずの画が見えたかどうかだと思います。それに、物議をかもし出すだけで、注目に値する作品だということなんですよ。反対する意見がない映画って当たらないんですよ。

増本 うーん。今の話聞いて、観たくなりました。元が携帯小説だし、子供の観る映画だと思ってたんですよ。

山本 君! 俺が17歳で、君が38歳ってのは、その辺なんだよ。

増本 まったく! その通りですねー(笑)。

山本 携帯小説も読んだけど、それもすごいと思った。ときとして、難しい表現を人(作家)は使いたがるけど、誰でもわかるようなユルい言葉を使っても、十分俺たちの情感に訴えかけることができるんだったら、そっちのほうが優秀だと思わない? そういった言葉で映画もやるようになったら、日本の映画も変わってくると思う。

増本 はい。確かに、そうですね。

山本 携帯小説は、その溝をうめるチャンスなんだよ! 増本も女子高生相手に商売してるんやから、そういうのをバカにしてたらいかん。

増本 バカにしてませんよー。それに、女子高生も相手にしてないですし(笑)。

山本 女子高生も、5年も経つときれいなOLさんになるやろ(笑)。

増本 あ、そうなったら興味がわいてきますね。

山本&増本 ワハハハハハ

 −  では最後に、2008年の抱負&野望を!

山本 (08年)俺は18歳になるので(笑)、夢と野望はいっぱいありすぎますね。というかね、久々にそろそろ海外をやろうかなと。機は熟してきたと思うので。

増本 (爆弾発言にうろたえながら)そ、それ、今、公表しちゃってもいいんですか!?

山本 中身はまだ秘密だけどね(笑)。

増本 07年は結構、こもってカチカチカチカチ書いてたことが多かったので、08年は役者として、もっと勝負してみたいな〜っと。しかも、そろそろ海外で、機は一切、熟してないけど・・・・

山本&増本 アハハハハ。(2人の映画談義は尽きることがなかった)

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山本さんの原点:ミロシュ・フォアマン
『カッコーの巣の上で』『イングリッシュ・ペイシェント』『アマデウス』などが、本来の自分の質としては好きですね。
自分が関わった映画は別として、人の映画で2回同じものを見ることはまずないけど、『カッコーの巣の上で』は3回見てますね。何が心にこういった作用を起こさせるのかが知りたくて。

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本人不在トーク(増本氏にいなくなってもらいました)

増本氏って山本さんから見て、どんな人?

増本は、批評したりって言うほど彼とは距離がないんでね。近すぎて、よう見えないよ。いつも内心、「あのやろう、出世しろよ」って思ってる。
まだクリエイションで真剣にドンパチやった事はないし、今までの作品のイメージでは仕事のフィールドが少し違うから、早く同じフィールドで仕事をしたいね。
クリエイターとしての彼の本格的な作品を見てなかったから、今回、彼が監督した作品(『草々曲』)は、俺にとっても興味津々。だけどそれを観せるってことは、リトマス試験紙を持ってる俺のところに、増本は液体を持って来ようとしてる訳なんですよ(笑)。でもこの試験紙は絶対的なものじゃあなくて、せいぜい山本病にかかれるかどうか位のゆるいやつなんだけど、俺と増本にとっては結構大事かなあ?
それ以外の部分で言えば、本当に友達だし。俺がいつどんなところで、どんな人と会ってても、「増本!来いや」って言える。誰の中にでも存在出来る男なんです。
なんていうかなぁ、どんなシーンでも大丈夫なヤツなんです。だから、どこにいようとも、電話かけると最初に必ず「今から来いよ!」って言いますね。(笑)ただ、増本は「え〜〜〜〜!?」って言うけど、来て欲しいと思うし、一緒にいると本当に楽しい友達なんですよ。

photo 山本 又一朗 やまもと・またいちろう
映画プロデューサー/株式会社トライストーン・エンタテイメント代表取締役
20代でハリウッドのプロデューサーに出会い、映画製作の道に進む事を決意。
1970年代後半からアニメーション/実写をとわず多くの映画の制作を手がける。
『ベルサイユのばら』(実写版)『小説吉田学校』『MISHIMA』『ザ・オーディション』『愛・旅立ち』等の話題作を次々に製作・発表。
これまでの日本映画界スタイルにとらわれない斬新な手法を評価する声は高い。
マシュー・モディーン主演の映画『ウインズ』など、日本とアメリカの共同制作も手がける国際派でもあり、海外の映画関係者などからは、MATAの愛称で親しまれている。
1993年に、映画制作・マネジメント会社であるトライストーン・エンタテイメントを設立。人気、実力ともに若手トップを走る小栗旬をはじめとする俳優やアーティストが所属している。
近年では、『あずみ』『あずみ2 Death or Love』など、海外から注目される邦画を制作。2007年10月に公開された『クローズ ZERO』(主演:小栗旬 監督:三池崇史)の大ヒットの記憶も新しい。

■今回の待ち合わせ駅「三軒茶屋」 今回の待ち合わせ駅「三軒茶屋」
東京都世田谷区にある東京急行電鉄の駅。
世田谷通り、国道246号の分岐点に位置する三軒茶屋は、世田谷を展望台から見渡せるキャロットタワーや大きなTSUTAYA、四方に広がる商店街などがあり、暮らしやすい街として人気である。駅の近くではレンタサイクルもあり、今回撮影した世田谷公園などを回るには最適。通称「三茶」と呼ばれる事も多い。

文:橘川有子

三宿で映画プロデューサー・山本又一朗さんと2008年の映画の展望について語り合いました。

2008年01月06日

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